通年採用やジョブ型採用をはじめ、インターンシップ等による大学1・2年生へのアプローチなど、昨今の採用市場は、大きな変化の波が訪れています。就活生を採用する企業もその波に対応していくことが求められる一方で、流行にとらわれず自社の「軸」を見出し、ブランディングを確立させることが採用活動の成功を左右します。一度採用ブランディングに失敗してしまうと、誤った自社のイメージを印象付けてしまう恐れもあるため、採用ブランディングに取り組む際には成功させるためのポイントをしっかり掴んで、正しく実践していくことが重要です。今回は、失敗しない採用ブランディングの秘訣について、解説していきます。
ところで採用ブランディングって何?
採用市場と働き手の意識が変化
就活生や企業を取り巻く採用市場は、今大きく変化しています。期間を限定せずに年間を通じて採用活動を行う「通年採用」の解禁や、終身雇用が終焉を迎えるなど、働き手の意識も変化しています。入社する段階で転職や副業を視野に入れるなど、多様な働き方を求める就活生も増えており、まさに新卒採用市場は再定義されようとしています。
特に通年採用が一般的になってくると、就活生は従来のように短期間で就活を行う必要がなくなります。応募する企業をよく検討することが可能となり、企業側もじっくりと就活生を見極めることができるようになり、留学生や専門人材など多様な経歴を持った人材と出会えるといったメリットも生まれます。その一方で企業側にとっては、表面的に取り繕ったアピールでは就活生に見抜かれてしまうというデメリットもあるでしょう。今までは自社の「見せたい面」だけを採用活動期間中に見せておけば、人材が集まってきました。しかし、お互いに見極める時間が生まれることで、高い情報収集能力を持つZ世代は、企業が発信している情報の真偽を深く確かめ、自身が納得した上で応募します。そのような時代に就活生にとって「魅力的な企業」になるには、長期的な視座に立った自社のブランド形成が求められてきます。
採用ブランディングは自社でしか行えない採用活動
採用ブランディングとは、企業認知度や就活生の入社意欲を高めるため、戦略的に自社をブランド化していく活動です。つまり、自社の理念や魅力を軸とし、自社でしか行えない採用活動を展開していくことを意味します。そのため、採用ブランディングでは、自社の商品・サービスの魅力に加えて企業理念や自社のカルチャー、働く環境、働きがい、福利厚生や研修制度など様々な観点から情報を発信し、就活生に「働く場所」として魅力を感じてもらう必要があります。つまり採用ブランディングとは、採用のために情報を発信する広報活動や、プロモーションを展開する採用マーケティングだけではなく、ブランド価値の再構築、人事・採用戦略、採用マーケティング戦略、採用コミュニケーション戦略まで、すべて含めたものを指すのです。
採用活動は最大の「経営課題」
採用目標人数を達成することができれば、当面の人手不足は解消できるかもしれません。ですが、採用活動の目的は、自社のビジョンを実現させ、ともに自社を成長させていくための「仲間集め」です。企業が目指す未来を共につくっていく人材を確保できないと、企業が存続していくことは難しくなります。つまり、採用は企業にとっての最大の経営課題と言うこともできます。採用活動は単なる人員補充ではなく、「仲間集め」という気持ちで取り組むようにしましょう。
採用ブランディングの目的と効果とは?
「共感」からの応募でマッチした人材を獲得
採用ブランディングの最たる目的は、「自社にマッチした人材を獲得し、長期的に活躍してもらう」ことです。そのために、自社のビジョンや事業内容、魅力などを深く理解してもらい、共感を得た上で、応募してもらうことが重要です。労働力人口が減少していく中、人材を取り合う売り手市場が今後も続いていくと予想されます。採用の難易度が増していく中、自社にマッチした人材を獲得するのは容易なことではありません。ですが、ただ企業情報を発信するだけでは、もとから自社に関心を示している人材にしかアプローチできません。そこで、より多くの就活生に興味をもってもらえるようアプローチするために、採用ブランディングが重要視されているのです。
採用ブランディングがもたらす6つ効果
採用ブランディングに取り組むことで企業が得られる効果は、主に6つあると考えられます。まず、採用ブランディングに取り組むことで、より多くの就活生に対して自社の情報を届けることができるため、企業の認知度向上につながり、応募先として検討してもらえるようになります。そうすれば、自然と自社に応募してくる就活生が増加し、優秀な人材を確保できる確率も高まります。加えて、自社が求める人物像を応募者自身が理解し、自分と合うか合わないかを検討した上で応募してくれるため、採用のミスマッチが低減。結果、応募者の質が向上することにもつながります。また、 自社にマッチした応募者が集まることで、内定辞退や早期離職を低減させることができるため、採用コストを下げることにもつながります。そして、採用ブランディングにより他社との違いを明確に打ち出すことで、「この会社で働きたい」と感じてもらうことができ、競合他社よりもよい人材を採用することも可能となります。
また、採用ブランディングは既存従業員のモチベーションを向上させることにも寄与します。採用ブランディングを行う過程で、自社の事業内容や企業理念、社風などの魅力を再認識することができ、モチベーションの向上はもちろん、「自分もそのブランドに関わる一員である」と、意識も高まっていくはずです。
以上のように、採用ブランディングは「企業の認知向上」「応募者数の増加」「応募者の質の向上」「採用コストの最適化」「競合企業との差別化」「従業員のモチベーションアップ」といった効果が期待でき、採用活動の好循環を生み出すことができるのです。
採用ブランディングの4つのステップ
採用ブランディングでは、経営理念から自社の強みを抽出し、各戦略を首尾一貫させることが大切です。ステップとして「①ブランド価値の再構築」「②人材・採用戦略」「③採用マーケティング戦略」「④採用コミュニケーション戦略」の4つがあります。まず、経営理念から抽出した「ブランド価値」に則って各3つの戦略を一気通貫で組み立てていきます。ここでは、採用ブランディングの4つのステップとつながりをそれぞれ解説していきます。
①「ブランド価値の再構築」とは
これは企業理念を細かく紐解き、就活生に向けて自社の魅力・価値を訴求するためのブランドの核を明確にすることです。自社だけが持つ「価値」を探り、就活生に訴求して共感を得てもらうには、今まで以上に採用市場に向けて独自のブランド価値を高める必要があります。ブランド価値は、市場背景や自社のサービスの変化に合わせて常に見直し、訴求し続けるものです。会社としてのビジョンは変えず、ブランドコンセプトや伝える内容、言葉などは時代に合わせて変化させなければなりません。この独自のブランド価値に連動する形で以降の戦略を組み立てます。
②「人材・採用戦略」とは
自社の求める人材を採用するために立てる戦略のことです。 ブランド価値の再構築の結果を踏まえ、求める人材像や自社の給与制度、教育体制等の諸制度の見直し、SDGsへの貢献姿勢を策定します。特に給与や待遇面、CSRなどは、就活生が着目する重要な要素です。また、採用活動を成功させるためには、中期経営計画や事業計画をもとに将来を見据えた採用活動の計画を立てることで、成果をあげることができます。場当たり的な戦略では人材を獲得できたとしても、一過性の成果となってしまいます。採用人材のミスマッチを低減させ、長く自社で活躍してもらうには、長期的な視点で「人材・採用戦略」を練っていく必要があります。
※「人材・採用戦略」は自社の経営戦略にも関わるので、お客様ご自身で設計していただくステップとなります
③「採用マーケティング戦略」とは
人材・採用戦略を基に、どこの大学・地域から、どんな学生(理系・文系等)に対して、どのような手段(TVCMやSNS等)とタイミングで、どの程度の予算感で訴求するのかを策定します。採用マーケティングでは、就活生が自社を認知してから入社後の活躍までを一貫したファネルとして捉えます。長期的かつ広範における採用マーケティングを行うことで、内定辞退や早期離職の防止などの効果も期待できます。
④「採用コミュニケーション戦略」とは
ここではリクルーティング専用LPや各種広告媒体、映像等に必要なビジュアル、コピー、パンフレット等の制作ツールを計画し、プロモーションを策定します。スマートフォンやSNSの発達によりZ世代の就職活動が大きく変貌していますが、未だに多くの企業が大手就職情報サイトに頼った情報発信を行っています。採用マーケティング戦略に基づき、自社が求める人材層に対し適切なメッセージやビジュアルの訴求方法を計画していきます。
採用ブランディングと採用広報の違い
また、採用ブランディングは「採用広報」と混同されがちですが、それぞれ目的が異なります。採用ブランディングの目的は、「自社にマッチした人材を獲得し、長期的に活躍してもらう」こと。採用競争を勝ち抜くために自社のブランド力を高め、競合他社との差別化を図り、就活生の「この会社で働きたい」という意欲をかきたてる活動です。一方、採用広報の目的は「企業理解度を向上させ、応募先として検討してもらう」ことです。自社で働くことのメリットや働くイメージを就活生に伝え、自社への応募を促すように情報を発信していきます。どちらも自社を発信していくという点では同じですが、採用広報は採用ブランディングの一施策であり、目的や定義は異なります。
失敗しないために不可欠な採用ブランディングのノウハウ
採用ブランディングは、前章で解説したように4つの軸を基に進めていきます。ですが、それぞれの活動が分断されてしまっていると一貫性のあるブランディングにならず、逆効果になってしまう恐れもあります。しっかりと全体戦略とコンセプト設計を行い、一本の線でつなぐブランディングとすることが、失敗しない採用ブランディングのカギとなります。JCDではその軸の作成からサポートすることができます。
例えば「ブランド価値の再構築」では、社長や従業員の方への取材や事業内容・社史の分析、就職意向調査などを行い、ブランドエッセンスを抽出。就活生に向けて会社の魅力・価値を訴求するための軸をしっかりと作っていきます。その上で、経営理念から自社ならではの強みを発掘し、各戦略を首尾一貫させる軸を作り、その軸に沿って採用コンセプトを策定していきます。また「採用コミュニケーション戦略」では、ターゲットのファネルに応じたチャネルを設定し、多数の受賞歴を誇る多彩なクリエイティブ集団が、キービジュアルやコピー、専用リクルートサイトやパンフレット等、必要なツールの制作を行います。JCDでは多くの企業のプロモーション実績から、就活生世代に刺さるメディア戦略・コンセプト設計も得意としています。就活生の実態を意識したメディア戦略で、動画広告やSNS広告、求人媒体などのメディア等の手配も行なっています。
また、JCDは人気企業ランキング上位を維持し続けてきたJTBの広報マーケティングやブランディングを手掛けてきました。ほか、あらゆる企業のブランディング強化策、メディア戦略、プロモーション支援の実績も豊富で、内定後の辞退を防ぐためのエンゲージメント向上施策、入社後の育成支援などに関しても、企業の経営理念やビジョンに沿った形で幅広くご提案することができます。
社会情勢の大きな変化は人材市場にも大きな変化をもたらし、就活生の深層心理にも深く影響を与えています。時代の流れにマッチした採用戦略が成功の鍵となる今、JCDがその経験とノウハウをリソース化し、新しい時代の採用ブランディングをトータルサポートいたします。
企業への導入事例から学ぶ
インナーブランディング活動の具体的な進め方
JTBデザインコミュニケーションが実際にコンサルティングしているA社を例に、実際にインナーブランディング活動を取り入れた事例を資料としてまとめました。 今後インナーブランディング活動を取り入れる上での参考となるはずです。ぜひご一読ください。
- 企業ブランディング
- 2023/06/23