採用ブランディングにおける4つのステップのうち、前段階となる「ブランド価値の再構築」と「人事・採用戦略」が策定できたら、メディア戦略を練って実行に移す「採用マーケティング」のステップに入ります。ここでしっかりと狙ったターゲットに企業の魅力を伝えていくには、何に気をつけてマーケティング戦略を展開するべきなのか。今回の記事では、採用マーケティングの進め方のポイントを、多様な企業プロモーションの経験をもつJCD戦略プランナーの服部がお伝えします。
マーケティング戦略は
独自の企業価値が軸となる
採用ブランディングの中でも、私は主に採用戦略を実行に移す「採用マーケティング」を担っています。以前の記事でも解説しているように、まず採用ブランディングに取り組む際には、独自の企業価値、つまり自社の強みが何であるかを突き詰めていきます。採用ブランディングに取り組もうとしている企業の方に求める学生像を聞くと、「チャレンジングな学生」「向上心やグローバルな視点を持っている学生」といった回答がとても多いんですね。ですがその一方で、自社がどんな価値をもっている会社なのかを突き詰めていかなければ、プロモーションそのものの設計や、キャッチコピーやパンフレットのビジュアル等、クリエイティブの軸も作れません。だからこそ、独自の企業価値を先にしっかりと固めておく必要があるんです。
採用マーケティングでは、今までの採用活動を振り返って自社の価値が適切にアウトプットできているのか、そしてそのアウトプットを見た学生たちが期待した反応を示しているかという調査から始めることが多いですね。調査から導き出される客観的なデータがあれば、採用担当者が社内の上層部に採用戦略を提案するときにも、単なる肌感覚での戦略ではないことを示すことができます。そして、社長を含め役員クラスもしくは課長クラス、一般クラスの社員に取材やアンケートを行い、客観的にその企業の価値構造を整理し、そこから強みを言語化していきます。このようにして、企業が求める人材像やその人材に応募してもらうためにはどういう企業であるべきか、企業の強みや他社と差別化できるポイントは何かをはっきりさせていきます。この大前提があるからこそ、プロモーション戦略やクリエイティブの判断基準ができ、おのずと迷うことがなくなっていくんですね。
採用マーケティングといっても、プロモーションを設計する過程は基本的には変わりません。もちろん採用の場合であれば相手が学生になるので、学生に刺さるメディアや伝え方を考える必要があるのですが、それはどの事業であっても同じです。課題感やターゲットによって戦略と戦術を変えることを考えると、根本的な考え方は一緒なんです。企業理念から紐解かれる独自のブランド価値に連動する形で、マーケティングの戦略を組み立てていく。それが企業理念の解像度をより高め、他社との差別化要素や自社に必要な人材をはっきりさせる。こうして最適なメディア戦略を描いていくことができるのです。
多くの中小企業に立ちはだかる認知度の課題
そこにプロが介在する意義とは
JCDはJTBのグループ会社ということもあり、全国のJTBの支店を通して多くの企業とのお付き合いがあります。私が今まで担当した採用マーケティングは、工業系の中小企業様が多いのですが、やはり大きな課題となっているのが学生たちの認知度の低さでした。ただ認知度が低くても、業績が右肩上がりの成長企業だったり、大手企業の物流を一手に担っているような企業だったり、機材の取り扱い免許の資格支援制度が充実している企業だったりと、実は魅力的なところが多いんです。それにも関わらず、社内の方は自社の訴求点をあまり自覚していません。例えば資格支援制度は、過去に理系大学の学生や社会人に対して行ったアンケートで「魅力的に感じる」との結果が出ていて、そこは競合他社と差別化を図る大きなポイントでもありました。私たち外部の人間がヒアリングをし、客観的な視点を入れるからこそ、社内でも自覚していない訴求ポイントを発見することができると考えています。
多くの中小企業は、学生に知られていないことがほとんどです。ですが、応募してもらうためには、まず企業の存在を知らせて興味を持ってもらい、応募先の選択肢に入れてもらわなければなりません。認知度を上げながら採用サイトへ誘導したり、動画で会社の内容を伝えたりと、様々な手段を用意して企業理解を深めてもらう必要があります。その上で学生に自主的に自社のことを調べてもらうための施策を打っていき、能動的な相手に効果的な広告なども併用します。こうしたきめ細かな設計によって、ようやくエントリーシートを出してもらうという、採用プロモーションの一つのゴールに結びつけていくことができるのです。認知度や採用市場の状況に合わせて戦略を柔軟に立てながら、ゴールに向けて必要な施策をベストなタイミングで打つことが大変重要となります。企業を客観的に見て訴求ポイントを発見できること、必要なタイミングで最適なプロモーションを打つことができること。私たちのようなマーケティング戦略のノウハウを持ったプロが採用プロモーションに介在する意義は、この2点にあるのではないでしょうか。
採用活動を成功させるポイントは
通年伴走できるパートナーを選ぶこと
採用マーケティングの失敗例でよく聞くのが、若手社員にすべて任せてしまうケースです。若手社員の方が就活生と年齢も近く、感覚も理解しているだろうという考えで任せているのだと思いますが、若手社員だけですと目先のビジュアルやキャッチコピー、サイトの構造などが先行してしまい、ブランディング全体の整理が不十分であることが多いんです。そうなると、最後に仕上がったものと企業理念の軸とのズレが生じてしまうこともあります。採用プロモーションには、まず企業理念を前提とした落とし込みが欠かせないことを理解していなければ、このようなケースが起こりうるのです。また、この大前提を理解し、採用サイトへの落とし込みもできているけれども、プロモーションの手段は知らないという企業も多いですね。ですので、最初のヒアリングでは企業の採用課題はどこで、どの段階に困りごとがあるのかをしっかりヒアリングしていくことが重要で、フロントに立つ営業担当者にはその点に気をつけてもらっていますし、私自身も気を付けるようにしています。
また、会社説明会の開始時期の変遷など、採用市場は毎年少しずつ変化が起きています。つまり、今年の採用計画が成功したからといって、次年度も同じタイミングで情報を出したり、同じメディアを使ったりなど、前年を踏襲しているだけでは期待している結果は出ません。ですので、今年度の採用計画が正しかったのかしっかり効果検証することが有効で、結果を踏まえて次年度の採用計画を常に更新していく必要があります。そのためには、通年通して伴走できるパートナーを選ぶことが採用ブランディングを成功させ、効果を最大化させるための鍵になってくるんです。
首尾一貫したブランディングで
ベストな採用手法を追求
私たちは「JTBコミュニケーションデザイン」という社名である以上、コミュニケーションをデザインするプロであると自負しています。ですから、採用する企業側とされる側の就活生が求めていることを汲み取って、マッチングさせる最適なタイミングや発信する内容、手段を首尾一貫させたコミュニケーションをデザインすることができ、その点がJCDの大きな強みでもあります。また、当社には大企業から中小企業、官公庁等のブランディング強化やメディア戦略、プロモーション支援の実績が豊富にあります。それに加えて、社内には組織開発や人材育成に特化した部署もあるので、内定者をどうやってエンゲージメントしていくのか、入社後にどのような研修をして育成していくのか、さらには従業員のモチベーションを高めるための施策等についても提案でき、様々なサポート体制が整っています。これら一つひとつは小さなピースですが、すべてを線で繋ぎ企業のブランディングを高めていくことができるのは、JCDだからこそですね。
先程もお伝えしましたが、なかなか社内だけで自社の魅力は気づけないものです。だからこそ客観的な外部からの目線を取り入れることが重要なんです。私たちとしてはその企業にどんな魅力があって、どのような想いでその事業に携わっているのかということを言語化するところから伴走して、一緒にベストな採用手法を追求していきたいと思っています。
コーポレートソリューション部
コミュニケーションプランニング局
戦略プランナー 服部大樹
1998年にJTBのグループ会社に入社。イベントの営業やプランニングに携わった後、JCDの前身となる広告代理店に転職。自治体及び官公庁のインバウンドマーケティングや観光促進の戦略策定、周年事業等のイベント、TVCMのディレクション等、多岐にわたるプロモーションを手掛ける。幼少期から絵を描くことが好きで芸術大学を卒業。また、特技の拳法は師範資格を取得するほどの腕前。
企業への導入事例から学ぶ
インナーブランディング活動の具体的な進め方
JTBデザインコミュニケーションが実際にコンサルティングしているA社を例に、実際にインナーブランディング活動を取り入れた事例を資料としてまとめました。 今後インナーブランディング活動を取り入れる上での参考となるはずです。ぜひご一読ください。
- 企業ブランディング
- 2023/06/23