採用マーケティングは何から手をつける?
採用ブランディングブランディング採用ブランディングにおける4つのステップのうち、前段階となる「ブランド価値の再構築」と「人事・採用戦略」が策定できたら、メディア戦略を練って実行に移す「採用マーケティング」のステップに入ります。ここでしっかりと狙ったターゲットに企業の魅力を伝えていくには、何に気をつけてマーケティング戦略を展開するべきなのか。今回の記事では、採用マーケティングの進め方のポイントを、多様な企業プロモーションの経験をもつJCD戦略プランナーの服部がお伝えします。
この記事でわかること
・採用マーケティングの重要性と導入によって得られるメリット
・採用マーケティングを実践するための具体的な5ステップ
・戦略の軸となる自社独自の価値(強み)を見つけるプロセス
・採用戦略の精度を高める代表的なフレームワーク
採用マーケティングとは?採用ブランディングとの違い
採用マーケティングとは、採用活動にマーケティングの考え方を取り入れ、求める人材に選ばれるための戦略的な取り組みです。
採用ブランディングとの違いは以下の通りです。
1.採用ブランディング:企業の認知度向上やイメージアップを図る中長期的な施策
2.採用マーケティング:認知から入社後までの一連のプロセスを設計し、応募や定着を促す具体的な仕組みづくり
これらを両輪で回すことが、現代の採用活動には求められています。
採用マーケティングが注目される背景
採用マーケティングが注目される背景には、以下のような環境変化があります。
1.労働人口の減少と採用市場における競争の激化
2.新卒や中途採用において求職者の価値観が多様化
3.SNSやWebなど情報収集の手法が多様化
従来の求人広告を出して待つ方法では、優秀な人材の確保が難しくなっています。
変化する市場に対応するため、自社に合った人材へ戦略的にアプローチする考え方が求められています。
採用マーケティングを取り入れる3つのメリット
採用マーケティングを導入することで、企業は以下の3つのメリットを得ることができます。
1.自社にマッチした人材の応募が増加する
2.入社後のミスマッチを防ぎ定着率が向上する
3.長期的な視点で採用活動にかかる費用を削減できる
人事担当者の皆様が抱える、採用してもすぐ辞めてしまうといった課題の解決にも繋がります。
それぞれのメリットについて、具体的な内容を見ていきましょう。
1. 自社にマッチした人材の応募が増加する
採用マーケティングでは、自社が本当に必要とする人材像を明確にし、そのターゲットに向けてピンポイントで情報を発信します。
これにより、単に応募数を増やすだけでなく、企業の理念や社風に共感した質の高い母集団を形成することができます。
たとえば、SNSやオウンドメディアを通じて現場のリアルな仕事内容を発信することで、求職者は入社後の働くイメージを持ちやすくなります。
結果として、自社の価値観に合致した転職希望者や新卒学生からの応募が増加し、選考の精度も高まっていくのです。
2. 入社後のミスマッチや早期離職を防ぐ
採用マーケティングは、応募を獲得して終わりではありません。
選考中から入社後までの一連の体験を設計するため、候補者とのコミュニケーションが深まり、相互理解が進みます。
ありのままの企業文化や研修制度、評価の仕組みなどを事前に正しく伝えることで、入社後のリアリティショックを軽減できます。
若手社員の離職率が高いとお悩みの企業においても、入社前の期待値調整を適切に行うことで、エンゲージメントの低下を防ぎ、人材の長期的な定着へと結びつけることが可能です。
3. 長期的な採用コストの削減につながる
初期段階では戦略設計やコンテンツ制作に時間と費用がかかる場合もありますが、長期的に見れば採用コストの最適化が図れます。
なぜなら、自社の魅力が蓄積されたコンテンツは資産となり、継続的に求職者を惹きつけるからです。
また、ミスマッチによる早期離職が減ることで、欠員補充のための追加採用にかかる費用や、新人研修など育成にかけたコストの無駄を防ぐことができます。
効果測定を繰り返して施策の精度を上げることで、無駄な広告費を抑えた効率的な採用活動が実現できるでしょう。
採用マーケティングを実践するための5つのステップ
採用マーケティングを効果的に進めるためには、戦略的なプロセスが欠かせません。場当たり的な施策にならないよう、以下の5つのステップに沿って取り組むことを推奨します。
・自社の現状と課題を分析する:競合他社と比較した際の自社の強みや、現場社員が感じるリアルな魅力を整理し、戦略の土台を築きます。
・求める人材のペルソナを設定する:理想の人物像(ペルソナ)をスキルや価値観まで詳細に描き、ターゲットを明確にします。
・キャンディデイトジャーニーを設計する:候補者が認知から入社に至るまでの行動や感情の変化を可視化し、適切な接点を考えます。
・適切な採用手法とチャネルを選定する:ペルソナの行動特性に合わせ、SNSやオウンドメディアなど最適な媒体を組み合わせて活用します。
・施策を実行し効果測定を行う:応募数や内定承諾率などのデータを分析し、改善を繰り返して自社独自の勝ちパターンを確立します。
各ステップの具体的な進め方について、人事担当者の皆さまが現場で実践しやすいポイントを順に解説します。
1. 自社の現状と課題を分析する
まずは、自社を取り巻く環境や現在の採用課題を客観的に把握することから始めます。
競合他社と比較して自社にどのような強みや弱みがあるのか、また労働市場においてどのような立ち位置にいるのかを整理しましょう。
この分析段階で、現場の社員にヒアリングを行うことも有効です。
経営層が考える魅力と、現場で働く社員が感じる魅力にはギャップがあることも多いため、多角的な視点で自社のリアルな価値を見つめ直すことが、後の戦略づくりの確固たる土台となります。
2. 求める人材のペルソナを設定する
現状分析を終えたら、次にどのような人材に来てほしいのかを具体化します。
漠然としたターゲットではなく、年齢や経験スキルや価値観やキャリアに対する考え方などを詳細に設定したペルソナ(架空の理想の人物像)を作成します。
ペルソナを明確にすることで、採用担当者間での認識のズレを防ぐことができます。
また、その人物がどのような情報を求め、どのような媒体で情報収集をしているのかを想像しやすくなるため、より求職者に響く的確なメッセージを作ることができるようになります。
3. キャンディデイトジャーニーを設計する
ペルソナが定まったら、キャンディデイトジャーニー(求職者が企業を認知してから入社に至るまでの行動や感情のプロセス)を設計します。
候補者がどの段階でどのような情報を知りたがり、何に不安を感じるのかを時系列で整理する手法です。
このプロセスを見える化することで、認知の段階ではSNSで社風を伝えるといったような、フェーズごとの適切なアプローチが見えてきます。
求職者の目線に立って、スムーズな採用体験を構築していくことが大切です。
4. 適切な採用手法とチャネルを選定する
設計したジャーニーに基づいて、求職者との接点となるチャネル(経路)を選定します。
現在は、求人広告だけでなく、ダイレクトリクルーティングやSNSや自社の採用サイトや社員紹介など、多様な手法が存在します。
すべての手法に手を出すのではなく、設定したペルソナが最も利用しそうな媒体を選ぶことがポイントです。
ターゲットに合わせた最適な組み合わせを考え、必要に応じてコンサルティングサービスなどを活用することも一つの選択肢です。
5. 施策を実行し効果測定を行う
戦略が固まったら施策を実行に移しますが、やりっぱなしにせず効果測定を行うことが不可欠です。
応募数や面接実施率や内定承諾率などのデータを取得し、目標に対してどの程度の成果が出ているかを確認します。
もし想定した結果が出ていなければ、ペルソナの設定や発信しているメッセージや使用しているツールなどに問題がないかを見直します。
このような検証を回し、常に改善を重ねていくことで、自社にとって最も効果的な採用マーケティングの仕組みが完成に近づいていきます。
採用マーケティングに役立つフレームワーク
採用マーケティングの戦略を練る際には、マーケティング領域で使われるフレームワークを活用するとスムーズです。
1.採用ファネル:認知から入社までのプロセスを段階分けする考え方
2.3C分析:自社と競合と求職者の視点から市場を整理する手法
3.カスタマージャーニー:求職者の心理や行動を時系列で可視化する手法
これらを活用することで、客観的なデータに基づいた説得力のある戦略を立てることができます。
採用ファネルの活用
採用ファネルとは、求職者が自社を認知してから入社に至るまでのプロセスを、認知から内定までの段階に分け、漏斗(ファネル)の形に見立てたフレームワークです。
段階が進むごとに人数が絞られていく様子を表しています。
このファネルを活用することで、自社の採用活動のどこに課題があるのかを特定しやすくなります。
たとえば、応募から選考への移行率が低い場合は、エントリー時の動機付けや事前の情報提供が不足している可能性があるといった具体的な改善策が打ち出せます。
3C分析による環境理解
3C分析とは、候補者と競合他社と自社の3つの視点から、採用市場における自社の立ち位置を把握するフレームワークです。
採用に当てはめる場合、まずは求職者のニーズや志向性を分析します。
次に、採用競合となる他社がどのような条件や魅力を提示しているかを調べます。
そして最後に、自社が提供できる強みや価値を整理します。
競合にはなく、かつ求職者が求めている自社独自の魅力を見つけ出すことで、他社との明確な差別化を図り、選ばれる企業へと成長するヒントが得られます。
マーケティング戦略は独自の企業価値が軸となる
採用ブランディングの中でも、私は主に採用戦略を実行に移す「採用マーケティング」を担っています。以前の記事でも解説しているように、まず採用ブランディングに取り組む際には、独自の企業価値、つまり自社の強みが何であるかを突き詰めていきます。採用ブランディングに取り組もうとしている企業の方に求める学生像を聞くと、「チャレンジングな学生」「向上心やグローバルな視点を持っている学生」といった回答がとても多いんですね。ですがその一方で、自社がどんな価値をもっている会社なのかを突き詰めていかなければ、プロモーションそのものの設計や、キャッチコピーやパンフレットのビジュアル等、クリエイティブの軸も作れません。だからこそ、独自の企業価値を先にしっかりと固めておく必要があるんです。
採用マーケティングでは、今までの採用活動を振り返って自社の価値が適切にアウトプットできているのか、そしてそのアウトプットを見た学生たちが期待した反応を示しているかという調査から始めることが多いですね。調査から導き出される客観的なデータがあれば、採用担当者が社内の上層部に採用戦略を提案するときにも、単なる肌感覚での戦略ではないことを示すことができます。そして、社長を含め役員クラスもしくは課長クラス、一般クラスの社員に取材やアンケートを行い、客観的にその企業の価値構造を整理し、そこから強みを言語化していきます。このようにして、企業が求める人材像やその人材に応募してもらうためにはどういう企業であるべきか、企業の強みや他社と差別化できるポイントは何かをはっきりさせていきます。この大前提があるからこそ、プロモーション戦略やクリエイティブの判断基準ができ、おのずと迷うことがなくなっていくんですね。
採用マーケティングといっても、プロモーションを設計する過程は基本的には変わりません。もちろん採用の場合であれば相手が学生になるので、学生に刺さるメディアや伝え方を考える必要があるのですが、それはどの事業であっても同じです。課題感やターゲットによって戦略と戦術を変えることを考えると、根本的な考え方は一緒なんです。企業理念から紐解かれる独自のブランド価値に連動する形で、マーケティングの戦略を組み立てていく。それが企業理念の解像度をより高め、他社との差別化要素や自社に必要な人材をはっきりさせる。こうして最適なメディア戦略を描いていくことができるのです。
多くの中小企業に立ちはだかる認知度の課題そこにプロが介在する意義とは
JCDはJTBのグループ会社ということもあり、全国のJTBの支店を通して多くの企業とのお付き合いがあります。私が今まで担当した採用マーケティングは、工業系の中小企業様が多いのですが、やはり大きな課題となっているのが学生たちの認知度の低さでした。ただ認知度が低くても、業績が右肩上がりの成長企業だったり、大手企業の物流を一手に担っているような企業だったり、機材の取り扱い免許の資格支援制度が充実している企業だったりと、実は魅力的なところが多いんです。それにも関わらず、社内の方は自社の訴求点をあまり自覚していません。例えば資格支援制度は、過去に理系大学の学生や社会人に対して行ったアンケートで「魅力的に感じる」との結果が出ていて、そこは競合他社と差別化を図る大きなポイントでもありました。私たち外部の人間がヒアリングをし、客観的な視点を入れるからこそ、社内でも自覚していない訴求ポイントを発見することができると考えています。
多くの中小企業は、学生に知られていないことがほとんどです。ですが、応募してもらうためには、まず企業の存在を知らせて興味を持ってもらい、応募先の選択肢に入れてもらわなければなりません。認知度を上げながら採用サイトへ誘導したり、動画で会社の内容を伝えたりと、様々な手段を用意して企業理解を深めてもらう必要があります。その上で学生に自主的に自社のことを調べてもらうための施策を打っていき、能動的な相手に効果的な広告なども併用します。こうしたきめ細かな設計によって、ようやくエントリーシートを出してもらうという、採用プロモーションの一つのゴールに結びつけていくことができるのです。認知度や採用市場の状況に合わせて戦略を柔軟に立てながら、ゴールに向けて必要な施策をベストなタイミングで打つことが大変重要となります。企業を客観的に見て訴求ポイントを発見できること、必要なタイミングで最適なプロモーションを打つことができること。私たちのようなマーケティング戦略のノウハウを持ったプロが採用プロモーションに介在する意義は、この2点にあるのではないでしょうか。
採用活動を成功させるポイントは通年伴走できるパートナーを選ぶこと
採用マーケティングの失敗例でよく聞くのが、若手社員にすべて任せてしまうケースです。若手社員の方が就活生と年齢も近く、感覚も理解しているだろうという考えで任せているのだと思いますが、若手社員だけですと目先のビジュアルやキャッチコピー、サイトの構造などが先行してしまい、ブランディング全体の整理が不十分であることが多いんです。そうなると、最後に仕上がったものと企業理念の軸とのズレが生じてしまうこともあります。採用プロモーションには、まず企業理念を前提とした落とし込みが欠かせないことを理解していなければ、このようなケースが起こりうるのです。また、この大前提を理解し、採用サイトへの落とし込みもできているけれども、プロモーションの手段は知らないという企業も多いですね。ですので、最初のヒアリングでは企業の採用課題はどこで、どの段階に困りごとがあるのかをしっかりヒアリングしていくことが重要で、フロントに立つ営業担当者にはその点に気をつけてもらっていますし、私自身も気を付けるようにしています。
また、会社説明会の開始時期の変遷など、採用市場は毎年少しずつ変化が起きています。つまり、今年の採用計画が成功したからといって、次年度も同じタイミングで情報を出したり、同じメディアを使ったりなど、前年を踏襲しているだけでは期待している結果は出ません。ですので、今年度の採用計画が正しかったのかしっかり効果検証することが有効で、結果を踏まえて次年度の採用計画を常に更新していく必要があります。そのためには、通年通して伴走できるパートナーを選ぶことが採用ブランディングを成功させ、効果を最大化させるための鍵になってくるんです。
首尾一貫したブランディングでベストな採用手法を追求
私たちは「JTBコミュニケーションデザイン」という社名である以上、コミュニケーションをデザインするプロであると自負しています。ですから、採用する企業側とされる側の就活生が求めていることを汲み取って、マッチングさせる最適なタイミングや発信する内容、手段を首尾一貫させたコミュニケーションをデザインすることができ、その点がJCDの大きな強みでもあります。また、当社には大企業から中小企業、官公庁等のブランディング強化やメディア戦略、プロモーション支援の実績が豊富にあります。それに加えて、社内には組織開発や人材育成に特化した部署もあるので、内定者をどうやってエンゲージメントしていくのか、入社後にどのような研修をして育成していくのか、さらには従業員のモチベーションを高めるための施策等についても提案でき、様々なサポート体制が整っています。これら一つひとつは小さなピースですが、すべてを線で繋ぎ企業のブランディングを高めていくことができるのは、JCDだからこそですね。
先程もお伝えしましたが、なかなか社内だけで自社の魅力は気づけないものです。だからこそ客観的な外部からの目線を取り入れることが重要なんです。私たちとしてはその企業にどんな魅力があって、どのような想いでその事業に携わっているのかということを言語化するところから伴走して、一緒にベストな採用手法を追求していきたいと思っています。