最近、弊社には、「管理職が、部下とのコミュニケーションに悩んでいる」「部下とのより良好な関係性を構築するためのポイントを学ばせたい」といったご相談が多く寄せられております。
心理的安全性の高い組織作りにおいて、重要なポジションを占める管理職のマネジメントのあり方が問われていることの表れと感じています。
弊社では、お客様が感じるサービス価値を、基本的価値~情緒的価値の6段階に分類、理解いただいた上で、「記憶に残る感動サービス」の提供に導く「JTBホスピタリティマネジメントメソッド」を開発し、「リピーターや贔屓客づくりにつながる人財育成」を行っております(下図参照)。
そして、これらで蓄積されたノウハウを活用し、「お客様と社員・スタッフ」を「上司と部下」の関係性に置き換えた「インナーコミュニケーションメソッド」を新たに開発し、展開しております。
本コラムでは、「インナーコミュニケーションメソッド」の内容に触れながら、上司と部下の信頼関係構築のコツについて、考察してまいります。
1:「インナーコミュニケーションメソッド」とは
「インナーコミュニケーションメソッド」とは、上司と一緒に働く部下との間に、より深い信頼関係が構築されることで、部下の「成長意欲」と「組織への貢献意欲」が醸成される。その関係性が組織の中にたくさん築かれてくると“成長したい・貢献したい“という社員が増え、結果、「社員から選ばれる(エンゲージメントの高い)企業」)」になる、という考え方を整理した、弊社独自のメソッドです(下図参照)。
●「インナーコミュニケーションメソッド」の3つの観点による整理
(1)上司は、「部下へ強い興味・関心を抱き、部下を大切に想う」気持ちを持つことが肝要。
その上で、部下を持つ立場として基盤となる「リーダーシップ行動」と、部下のパフォーマンス・成
果を向上させるために必要な「マネジメント行動」を実践する。
(2)上司は、部下との信頼関係構築を図る上で基礎として欠かすことのできない「基本的要因」を漏れな
く実践した上で、さらに「この人と仕事をしたい」と部下に思われることができる「感情的要因」を
実践することで、はじめて部下との深い信頼関係が構築される。
(3)部下との深い信頼関係が構築されると、部下の「成長意欲」「貢献意欲」が醸成され、“成長したい”
“組織や会社に貢献したい”という社員が増え、社員から選ばれる企業へと昇華させることができる。
2:上司が部下に興味・関心を持つことが原点
前項で示した通り、上司が部下に対して、「興味・関心を持ち、部下を大切に想う。」いわゆる「リスペクトする」感覚を持つことが重要になります。上司が、部下は上司として指示命令して使うものというような感覚で捉えている限りは、信頼関係は生まれません。
最近は、パワーハラスメントなどもよく話題になるので、指示命令というような態度は減りつつありますが、逆に、いわゆる「無関心・放任」という上司が増加しています。特に、個人情報の関係からプライベートのことは聞くべきではない、と一切、部下の行動や私生活を聞かない、関心を持たないなどという話をよく耳にします。
もちろん、ことさらに部下から色々なことを根掘り葉掘り聞きだすことはよくないといえますし、高圧的に指示命令することも部下が危険や不快を感じて嫌がる場合が多いですが、何も話してくれない、相談にも乗ってくれない、という無関心な上司には、全く信頼を感じません。
上司が持つべき資質は、「部下を(チームの仲間として)大切に想う心」。リスペクトという言葉に置き換えてもいいですが、部下を大切に想う心、さえあれば、部下に対する興味・関心が生まれてきます。
3:一緒に働く部下との深い信頼関係構築に必要
な“部下が感じる価値要因”
さて、「興味・関心を持ち、部下を大切に想う。」心を持った後、具体的に上司はどのような行動を取ったらよいのでしょうか。それが、「リーダーシップ行動」と「マネジメント行動」です。
部下を持つ者として基本的に身に着け、所作できるべき「リーダーの資質・行動」があります。いわゆる「人格」に近しいもので、礼儀や言葉遣いから始まり、約束を守り、率先垂範するなどの行動です。これを身に着けている、自然にできることが基礎となります。
そして、その上に、「情緒や感性」に近しい「相手に対しての資質・行動」があります。「品格」と表現できるかもしれません。判断や足渡し、洞察・察知や成長支援、部下の期待を上回る提案や成果などを指します。これらができると「部下は心を動かされ、上司に対する信頼度」が増えてきます。
チームをうまくコントロールし、まとめ上げている上司は、この2つの行動が無意識に、バランスよくできているということができます。
●部下との深い信頼関係に必要な「部下が感じる価値要因」(下図参照)。
「欠かすことなく実践したい要因=基本的要因」は漏れなく実践し、加えて「より深い信頼関係を築くことができる=感情的要因」を実践することで、部下とのより深い信頼関係を構築することができる、という観点を「6つのレベル/23の価値要因」としてまとめています。
基本的要因(レベル1~3)
レベル1~3は「基本的要因」とし、いかなるコミュニケーションの場面において重要で、信頼関係構築においては、欠かすことなく実践したい要因として、整理しています。
●レベル1:基本姿勢
部下との円滑な人間関係を築く上で土台となる、基本的な姿勢に関する要因
●レベル2:関係構築
部下との関係構築を図る上で必須で、常に実践し続けたい要因
●レベル3:協働意識
お互いを尊重しながら、対等な立場で協力して働くことができるようにするために、実践したい要因
感情的要因(レベル4~6)
レベル4~6は「感情的要因」とし、1つでも多く実践することで、部下から「また一緒に仕事をしたい」と思われる、深い信頼関係を築くことができる要因として、整理しています。
●レベル4:成果支援
部下の成果へつなげるため、部下に関心を寄せ、その状況により自らの知見の提供や、協力支援を行う、といった要因
●レベル5:成長支援
部下の成長へつなげるため、実践を通した気づきや学びを提供し、部下のさらなる意欲醸成につなげる要因
●レベル6:貢献支援
部下の行動が、組織への貢献へとつながること、ということを部下に実感してもらうために、実践したい要因
日頃から「部下とのコミュニケーションに悩んでいる」という方、また、組織全体のチームワークや管理職のパフォーマンスに課題感を感じている企業のご担当者様は、ぜひ上記に照らし合わせて、自身の実践状況を振り返る、組織の状態を想像する、などを行ってみてください。
何らかの気づきがあれば、その点を改善する取り組みを行うことがポイントになっていきます。
(弊社ではメソッドを活用したマネジメント研修やコンサルティングも行っておりますので、ご相談を承ることも可能です)。
HRコンサルティング事業局
シニアコンサルタント 佐藤 昌弘
大手コンビニエンスストアで店長を経験後、新入社員や中途入社社員の教育・研修を担当。その後、外資系保険会社で営業活動に従事したのち、大手銀行で生命保険販売推進責任者として保険販売指導を担う。JCDに入社後、現在は企業向けコンサルタントとして活動している。
企業への導入事例から学ぶ
インナーブランディング活動の具体的な進め方
JTBデザインコミュニケーションが実際にコンサルティングしているA社を例に、実際にインナーブランディング活動を取り入れた事例を資料としてまとめました。 今後インナーブランディング活動を取り入れる上での参考となるはずです。ぜひご一読ください。
- 人と組織
- 2025/06/10