ミッション・ビジョン・バリューの違いは? 決め方や浸透させるコツ
ビジョンバリュー企業にとって、「社員が高いモチベーションを持って業務に取り組んでいる」、「職場のコミュニケーションが活発」といった状態は、まさに理想の状態ではないでしょうか。
近年、こうした理想の状態が実現できている企業では、「ミッション」、「ビジョン」、「バリュー」が企業内に浸透している傾向があります。企業の目標や存在意義を理解し、共感している社員は、苦難に直面しても企業の成長に貢献してくれます。
そこで今回は、ミッション、ビジョン、バリューのそれぞれの違いや、決定する方法を事例とともに解説します。
ミッション、ビジョン、バリューの違いや決め方については「ミッション・ビジョン・バリューの違いは? 決め方や浸透させるコツ」で詳しく紹介しています。
この記事でわかること
・ ミッション・ビジョン・バリューの定義とそれぞれの関係性
・ 組織力向上につながるMVVの策定メリットと具体的な決め方
・ 社員の共感を呼んで組織に浸透させるためのポイント
ミッション・ビジョン・バリューの違いは「時間軸ごとの行動指針」
ミッション、ビジョン、バリューの必要性は、書籍『マネジメント』でも知られる経営学者P.F.ドラッカーが2003年に出版した著書『ManagingintheNextSociety(ネクスト・ソサエティ)』で、「これからの企業は、ミッション、ビジョン、バリューを定め、組織全体で明確な存在意義や価値観を共有できている状態が望ましい」と訴えました。
明確な価値観の浸透は、組織としての一体感を生み出します。近年、企業が抱える課題として挙げられる「社内コミュニケーションの停滞」や「社員のモチベーション低下」は、価値観の浸透によって社員の目線を揃えることで、解決が見込めます。
モチベーションとは「特定の方向や目標に向けた行動を引き起こす力」、いわゆるやる気です。この指針がなければ、社員のモチベーション維持は難しいでしょう。だからこそ、これからも成長を目指す企業は、ミッション、ビジョン、バリューを定めておく必要があるのです。
しかし、ミッション、ビジョン、バリューそれぞれの違いについて正確に理解している人は決して多くないでしょう。まずは各考え方の特徴や違いについて解説します。
ミッション(Mission)「会社や組織が将来的に果たすべき使命や存在意義」
例
◆DelightandImpacttheWorld 世界に喜びと驚きを/株式会社ディー・エヌ・エー◆いつでも、どこでも、誰にでも。欲しいものを欲しいときにお届けする革新的生活インフラを最もエコロジーなかたちで実現する。/アスクル株式会社引用:『ミッション・ビジョン』株式会社ディー・エヌ・エー
引用:『ASKULWAY』アスクル株式会社
“ミッション”とは、「使命、役割、存在意義」などと訳されるように、会社や組織が果たすべき使命を表す言葉です。「何のために自社は存在するのか」、「自社によって、社会や人々はどうなるのか」を言語化した内容であり、活動の方向性や役割を定めるための指針となります。
また、ミッションは「企業理念」と混同されやすい言葉です。これは「企業の理想や社会に対する考え」である企業理念との違いが明確でないためでしょう。
しかしミッションは企業理念を踏まえたうえで、「どのような形で貢献していくか」、具体的な行動にまで落とし込んでいる点で異なります。ミッションを定めるときに2つを混同してしまう場合、企業理念は「考え方」、ミッションは「行動」と区別するとよいでしょう。
理念浸透については「浸透する理念の作り方と事例」で詳しく紹介しています。
ビジョン(Vision)「企業がミッションを達成するための中長期的な目標」
例
◆21世紀を代表する会社を創る/株式会社サイバーエージェント◆インターネット学習で人類を変革する/株式会社Schoo引用:『ビジョン』株式会社サイバーエージェント
引用:株式会社Schoo
「将来」や「未来像」とも訳される“ビジョン”は、企業が中長期的に目指す姿や目標を示しています。ビジョンはミッションを達成するための中間目標として設定されることが多く、ミッションがぶれないための役割も含んでいます。
バリュー(Value)「社員が日々発揮するべき価値」
例
◆「努力って楽しい。」「No.1」「挑戦」「逆算」「スピード」「執念」/ソフトバンクグループ株式会社◆「新しい価値の創造」「個の尊重」「社会への貢献」/株式会社リクルートホールディングス引用:『ソフトバンクバリュー』ソフトバンクグループ株式会社
引用:『ビジョン・ミッション・バリューズ』株式会社リクルートホールディングス
「価値観」や「価値基準」といった意味の“バリュー”とは、ミッションとビジョンを達成するために、社員それぞれが日々発揮するべき価値のことです。企業や社会の使命やあり方を示すミッションやビジョンとは異なり、バリューは企業を構成している社員の行動や姿勢、持つべき心構えを示しています。
つまり、社員一人ひとりがバリューを体現することが、企業が中長期で目指すビジョンを達成し、ミッションの実現につながるのです。
企業理念や経営理念とMVVの違いとは
結論から申し上げますと、企業理念は「不変の哲学」、経営理念は「中長期的な方針」、MVVはそれらを「具体的な行動と未来像に落とし込んだもの」という違いが存在します。
・企業理念:創業から変わらない組織の存在価値
・経営理念:環境に合わせて変化する活動方針
・MVV:理念を実現するための目標と行動基準
これらを整理して連動させれば、組織の軸が強固になり、日々の業務における具体的なアクションを促すことができます。
MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定する3つのメリット
結論からお伝えすると、MVVの策定は以下3つの大きなメリットをもたらします。
・現場での意思決定がスピーディーになる
・採用活動でのミスマッチを防げる
・従業員のエンゲージメントが高まる
MVVが組織の明確な「軸」として機能すれば、組織風土改革や生産性の向上を後押しする要素となります。それぞれのメリットがもたらす具体的な効果について、詳しく紹介します。
現場での意思決定がスピーディーになる
組織の目指す方向性や価値観が明確になると、現場のチームや個人の意思決定が非常にスピーディーになります。
管理職の育成が進まない、現場の判断が遅いといった課題は、判断基準が曖昧なことで発生しがちです。MVVという共通の軸があれば、迷った際にも「この選択は自社のバリューに沿っているか」と自問できます。上司の指示を待つだけでなく、従業員一人ひとりが一貫性を持った素早い対応を自律的に行えるようになるのが特徴です。
組織課題の解決フレームワークについては「組織課題の見つけ方から解決のフレームワーク」で詳しく紹介しています。
採用のミスマッチを防ぎ定着率を高める
MVVを社外へ積極的に発信する取り組みは、企業の価値観に深く共感する人材を引き寄せます。
「入社してみたら思っていた雰囲気と違った」という理由で若手社員の離職率が高い場合、自社の魅力や方向性が求職者に正しく伝わっていない可能性があります。MVVを通じて「何のために存在し、どう行動する組織か」を明確に提示することで、採用時のミスマッチを防ぎ、入社後も長く活躍できる優秀な人材の定着を促進します。
従業員のエンゲージメントを向上させる
日々の業務が何のためにあるのか、その目的(パーパス)を実感できると、従業員の仕事に対するモチベーションは大きく向上します。
「エンゲージメントが低い」という悩みを抱える組織では、会社の目標と個人の目標がリンクしていないことが少なくありません。MVVが浸透し、自分の仕事が社会や会社のビジョンにどう貢献しているかが見える化されることで、自律的な組織風土へと変わっていきます。研修などを通じてMVVの理解を深める取り組みも有効な一歩です。
モチベーションアップにつなげるミッション・ビジョン・バリューの決め方
将来的に実現したい行動内容である「ミッション」、その達成のために掲げる中期目標の「ビジョン」、この2つを実現するために日々発揮すべき価値である「バリュー」。
それぞれの内容は理解するだけでなく、言語化し、社内に浸透させなければ意味がありません。実際にこれらを定め、言語化するための方法を紹介します。
ミッションは「企業が果たそうとする目的と必要な行動」
成功を収めている企業は、『われわれの事業は何か』を問い、その問いに対する答えを考え、明確にすることによって成功がもたらされている。
出典:P.F.ドラッカー/『現代の経営』
ドラッカーが「成功を収める企業は、自らの目的とその答えを考え、明確にしている」と伝えているように、ミッションは企業が成功するためのヒントです。
そのため、「商品をきっかけに社会貢献したい」、「顧客の抱える課題を解決したい」といった企業が果たそうとしている目的から、実現のために必要な行動を考えていくのが良いでしょう。
これらの答えを付箋に書き出し、共通する意見ごとにまとめていく方法がおすすめです。企業が置かれた課題と具体的な行動を可視化したうえで、特に意見が集中した要素を抜き出し、まとめるとミッションの枠組みが明確になります。
ビジョンは「未来像」と「事業」の視点から考える
ビジョンが示すものを簡単に考えた場合、主にふたつの視点があります。
ひとつは「◯◯市場におけるリーディングカンパニー」といった企業の未来像、もうひとつは「◯◯によって××という課題の解決」といった企業の事業がもたらす世界の変化です。
未来像を基準に考える際は、「どれほどの規模を目指しているのか」の視点、事業による世界の変化は「自社のサービスや商品によって、どのような社会課題を解決するのか」といった視点が必要です。
このような視点からビジョンを考えることで、目指すべき方向性が定まります。結果として「同じビジョンに向かって業務を行う」という共通点のもと、社員がお互いに協力し合う体制が築かれ、団結力も高まります。
ビジョンはミッションとともに、創業時や企業の規模が拡大する前に設定すること、目標を達成した際には再度見直しを行うことが望ましいとされています。今日まで長く続いている企業の多くは、時代の変化に合わせてビジョンを最適化し、社員が一体となって取り組むことができる環境を整えています。
バリューで目的までのギャップを埋める
バリューを定めるためには、ミッションとビジョン、現状を比較することが求められます。未来像の実現や中長期の目標を達成するために求められる行動や姿勢を社員とともにリストアップし、具体化していきましょう。
バリューは、そのまま日々の行動指針にもなる要素です。どのような背景を持つ社員であっても対応ができるよう、さまざまな職種や年齢の社員を巻き込みながら決定していく姿勢が重要です。
MVVを策定・見直すための4つのステップ
MVVを単なるお題目で終わらせないためには、策定のプロセス自体に社員を巻き込むことがポイントです。以下のステップを参考に進める方法をおすすめします。
・自己分析と現状分析:創業の原体験や現在の組織課題を整理する
・ワークショップの実施:現場のメンバーも交えて徹底的に議論する
・言語化:シンプルで誰にでもわかりやすい言葉にまとめる
・評価制度への反映:バリューに沿った行動を適切に評価する
経営層だけで決めるのではなく、部署を横断した共創を行うことで、その後の浸透をスムーズに進めることができます。
理念浸透のプロセスについては「理念浸透が進まない原因と実践プロセス」で詳しく紹介しています。
ミッション、ビジョン、バリューを浸透させるコツは「自分ごと化」
「ミッション、ビジョン、バリューを定めたものの、なかなか社内に浸透できていない」という悩みを抱く企業も多いでしょう。
社員にミション、ビジョン、バリューを浸透させる目的から、これらの唱和を義務化している企業も見られますが、トップダウンによる価値観の押し付けは、逆効果となる可能性があります。こうした価値観を浸透させるためには、社員が自らミッション、ビジョン、バリューに共感してもらえるような仕組みや施策が効果的です。
形骸化しないミッションなどを定めるためには、社員を巻き込んだ形での策定が重要です。社員も自分が働く企業の指針を決める場に参加することで、「自分ごと化」につながります。その際は些細な意見であっても、貴重な参考材料として受け止め、社員全員が関与している状態を意図的に作りましょう。
策定が終わったあとに社内へ浸透させる際は、全社会議や社内行事といった全社員が集まる機会にその背景や思想を発信したり、バリューを体現できている人を評価したりするといった取り組みが有効でしょう。
【事例】有名企業が定めているミッション・ビジョン・バリュー
数々の有名企業も、それぞれの個性が見られるミッション、ビジョン、バリューを定めています。これから策定しようとしている方や、あらためて見直しをしようとしている方は参考にしても良いでしょう。
キリンホールディングス株式会社
グループ経営理念:ミッション:キリングループは、自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します2027年の目指す姿:ビジョン:食から医にわたる領域で価値を創造し、CSV先進企業となる“OneKIRIN”:バリュー:熱意・誠意・多様性引用:『企業方針』キリンホールディングス株式会社
キリンホールディングスは「2027年の目指す姿」としてビジョンを設定しており、ビジョンを達成する手段としてCSV(CreatingSharedValue/社会課題への取り組みによる「社会的価値の創造」と「経済的価値の創造」の両立により、企業価値向上を実現すること)先進企業となる、という具体例に落とし込んでいます。明確な期限を設けたビジョンは、達成に向けスケジューリングをするうえでも役立ちます。
ヤフー株式会社
ミッション:課題解決エンジンビジョン:UPDATEJAPANバリュー:「AllYahoo!JAPAN」「個のチカラ」「発見・提案・改善」「圧倒的当事者意識」「やりぬく」引用:『Yahoo!JAPANのミッション・ビジョン・バリュー』ヤフー株式会社
デジタル庁
ミッション:「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を」
ビジョン:「Government as a Service, Government as a Startup」
バリュー:「一人ひとりのために」「あらゆる立場を超えて」など
デジタル庁では、年齢や性別に関係なく暮らしやすい社会を目指すことをミッションに掲げています。行政機関でありながらスタートアップのような価値観を持ち、あらゆる立場を超えたチームでの行動規範をバリューとして定めているのが特徴です。
株式会社マネーフォワード
ミッション:「お金を前へ。人生をもっと前へ。」
ビジョン:「すべての人の、『お金のプラットフォーム』になる。」
バリュー:「User Focus」など
同社では、お金が人生や社会に与える影響に対して、企業がどう関わるかをシンプルに定義しました。いかなる制約があっても常にユーザーを見つめ続け、期待を超える価値を提供するという行動規範は、社員の具体的な行動を強く後押ししています。
トヨタ自動車株式会社
ミッション:「わたしたちは、幸せを量産する」
ビジョン:「可動性(モビリティ)を社会の可能性に変える」
バリュー:独自の行動指針である「トヨタウェイ」
同社は、単なる移動手段の提供にとどまらず、社会全体の幸せに貢献するという存在意義を掲げています。現場の継続的な改善行動を支える独自の価値観が根付いており、組織全体のパフォーマンスを飛躍的に高める原動力として機能しています。
ミッション、ビジョン、バリューは「企業の指針」として最重要
「ミッション、ビジョン、バリューは、定めても効果がないのではないか」と考える人もいるかもしれません。しかし、企業の目標や社員一人ひとりが発揮すべき価値が定まっていれば、困難に直面しても社内の一体感を損なわず、目標達成に向けて前向きなコミュニケーションを取れるようになります。
ミッション、ビジョン、バリューは定めて終わりではありません。その内容を浸透させる取り組みまで徹底することが非常に重要です。こうした価値観は社員のモチベーションに影響する要素であるため、課題を感じている企業は、ミッション、ビジョン、バリューの策定を検討してはいかがでしょうか。